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「序の舞」を読みました・・・上村松園の生涯・・・ [読書感想文]

序の舞 上 (1)

序の舞 上 (1)

  • 作者: 宮尾 登美子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社出版局
  • 発売日: 1982/11
  • メディア: 単行本

序の舞 下

序の舞 下

  • 作者: 宮尾 登美子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社出版局
  • 発売日: 1982/11
  • メディア: 単行本


中学生のころ、上村松園の繊細な美人画を一目見て大好きになりました。(図版でしたが^^;)
まっ白で透き通るような頬に、女性の日本髪のやわらかい色がなんとも言えず美しく、かんざしや着物の柄や小物のひとつひとつまでがうっとりするような上品さでした。
その絵を見て感動した直後、美術の課題が人物画だったので、どうしてもあのきれいな髪が描いてみたくなり、見よう見まねで水彩絵の具を薄く溶いて、額の生え際をふんわりぼかし、細い筆をつかって産毛を一本一本描いてみました。
髪を細かく描くのはものすごく時間がかかったけれど、本人は大満足。
けれど、そのへたくそな"松園もどき"は先生には大不評でした。
「どうしたの?この薄ボケた色。絵の具をもっと使って濃くきちんと塗れば良い点数あげたのに。」
わざと濃い色じゃなくて、薄い色を重ねて髪の色を出したんだよ!と言いたかったのですが「センスないね」といわれた気がして口に出せませんでした。
がんばったのに褒めてもらえずちょっとがっかりした思い出です・・・
でも本当にきれいだったのですよ、その時見た松園の絵。子どもだった私でも「まねしてみたい!」とすっかり影響されてしまったくらいに。

「序の舞」は、女流日本画家・上村松園をモデルにその生涯を描いた宮尾登美子作の長編。発刊は1982年です。

ひさしぶりに読み終わってしまうのが惜しい、と思える小説でした。本当に面白かった!

絵を描くのが好きで好きで、一途で世間知らずな松園(文中では「松翠」)。
そんな娘とは一蓮托生だと、彼女を丸ごと受け止め、一生ずっと支え続ける母・仲子(文中・勢以)。
度重なる理不尽に耐え、不幸な恋も夢のように気品のある絵を描くことで昇華してゆく強さ。
松園と恋し彼女を捨ててゆく男性たちが、それぞれひどく松園を傷つけるのが憎たらしいのですが卑怯さに不満をおぼえながらも、魅力を感じる人物ばかりです。
女流画家であるがゆえのイジメや絵の評価の低さなどの世間の酷薄さに憤り、彼女がつかの間救われ癒される場面では、ついいっしょに涙してしまいました。
・・・・ってわたしが書くとなんだか、昼のドロドロドラマみたいですね(笑)

ぎっしりとつまった精緻で几帳面な文章が最初はちょっときつい。
実在の人物をモデルに書かれた小説ですから、本人しか知らない心の部分などは創作ですし、きれいごとすぎる感もあるのですが、迫力と勢いのある描写に引きずられ後半にかかったころにはもうゆっくり読むのに我慢できず、気がついたらいっきに読み終わっていました。

もっと若いうちに読んだら、松園の世間知らずなところがハナについたり、男性たちの薄情さや卑怯さにもいちいち本気でウンザリしていたかもしれないですね。
こんな小説を楽しんで読めるようになったのもこのトシになったからかもしれません^^;


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コメント 2

unatama2005

っていうかさ、その美術の教師もなっちゃねーな!
美術に点数なんかねーんだっつーの!

さておき、ちなみにあたいは映画版も見た事ありやす。
名取裕子が主人公なんだけんど、かなり忠実に映画化されていてオモシロかったよ。
by unatama2005 (2006-03-28 21:07) 

banana

なんだかこの本読んでたら、そういう小さいころの思い出がわーっと蘇ってきたんだよね^^
こんな昔のささいなくやしい気持ちをちゃんとおぼえてて意外だったなぁ。
その先生にはその後、手のひら返すように大絶賛されたこともありなんで態度がコロコロ変わるのかいつも混乱してた。
子供のころは、先生の好みで点数が決まる、ってことがあるということ理解できなかったんだよねー^^;世間を知らないからさ・・・

映画は名取裕子なんだ!かなり妖艶なイメージだね。面白そう!
原作は「ややととさん」でいくつになっても幼いかんじだけど、名取裕子がやったのも見てみたいなー^^TUTAYAで探してみる♪
by banana (2006-03-29 10:08) 

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